女性ヘルスケア委員会企画
PMS・PMDD診療の現状と問題点~産婦人科医の皆様に知っていただきたいこと~
月経前症候群(PMS),月経前不快気分障害(PMDD)は,月経前の不快な精神・身体症状を特長とし,QOLを著しく障害する.我が国においては,諸外国に比べても疾患認知が遅れており,また治療に関しても普及していないのが現状である.そこで,女性ヘルスケア委員会(令和3年度・4年度)「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療実態調査小委員会」において,産婦人科医・精神科医を対象に実態調査を実施した.今回は,産婦人科医対象の調査結果から明らかとなった問題点に基づきプログラムを企画した.最初に講演1では,調査結果の概要をお示しする.今回明らかになった事項をまとめると,診断に関しては,「漠然とした問診のみ」と答えたものが大部分であり,スクリーニングツール使用,ACOGやDSMの診断基準にある,「症状日誌による前向き評価」については少数であった(2周期8.4%).治療の第一選択薬は,OC・LEP,漢方薬であり,SSRIは2.6%と少数であった.OC・LEPの第一選択薬は,ドロスピレノン含有製剤が65.1%であった.以上より,ほとんどの産婦人科医が,診断基準で必須の症状日誌による前向き評価を実施していないことが明らかとなり,スクリーニングツールも使用せず,曖昧な問診に基づいた診断を行っている実態が強く疑われた.治療に関しては,EBMに基づかない薬剤選択もあり,SSRIの使用選択率が低いことへの対応も含め,PMS/PMDDに関する産婦人科医への教育が必要であると考えられた.そこで,講演2では,EBMに基づいた診断・治療,講演3では,精神科の立場からSSRI治療の実際をご紹介したい.最後の講演4では,標準治療のSSRIやドロスピレノン含有製剤に変わりうる治療薬候補を中心に,現在医師主導治験を実施中のビタミンB6(ピリドキサミン)を含めて,診断・治療の新展開をご紹介したい.
2023年 第75回