日本語ポスター90
ホルモン補充周期凍結融解胚移植は遅発型妊娠高血圧症候群の危険因子
榎本 紗也子, 田中 博明, 阪本 美登, 森下 みどり, 北野 裕子, 高山 恵理奈, 西岡 美喜子, 前沢 忠志, 池田 智明
三重大附属病院
【目的】日本において生殖補助医療(ART)での妊娠は増加しており,ARTと周産期予後の関係について様々な報告がなされている.その一つとして,ホルモン補充周期凍結融解胚移植では排卵周期凍結融解胚移植と比較して有意に周産期合併症が増加することが指摘されている.本研究ではホルモン補充周期凍結融解胚移植と周産期予後,特に妊娠高血圧症候群(HDP)に着目し,その関係について明らかにすることを目的とした.【方法】体外受精により妊娠成立し,2018年から2020年に当院で分娩した症例の内,診療録に移植時の情報(新鮮胚移植・排卵周期凍結融解胚移植・ホルモン補充周期凍結融解胚移植)が記載されていた症例を抽出した.それらの症例の母体情報・周産期合併症を後方視的に収集した.新鮮胚移植症例と排卵周期凍結融解胚移植症例を自然周期群(n=58)とし,ホルモン補充周期群(n=145)と周産期予後に関して比較検討した.【成績】ホルモン補充周期群 vs 自然周期群で,年齢,経産,人工妊娠中絶歴,帝王切開歴はいずれも有意差を認めなかった.産科合併症として臨床的癒着胎盤が21例(14%) vs 2例(3%)(p=0.025),慢性高血圧症を除くHDPが19例(13%) vs 2例(3%)(p=0.041)と有意差を認めた.HDPの発症時期に関して,遅発型がホルモン補充周期群と自然周期群それぞれで18/19例(95%),1/2例(50%)と大半を占めていた.【結論】ホルモン補充周期凍結融解胚移植では,黄体ホルモンやリラキシンなどの濃度が影響し,着床から胎盤形成不全が起き早発型HDPが増加するのではないかと考えられていた.本研究で早発型ではなく遅発型HDPが増加することが明らかとなり,今後その成因について再構築しなければならない.
2022年 第74回